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物理化学は物質の構造・性質・反応を体系的に解明しようとする学問で、生命科学を学ぶ上で極めて重要な科目である。とりわけ、医薬品の適正使用に責任ある立場の薬剤師を目指す学生にとって習得せねばならない物理化学の重要項目としては、(1)分子自身が示す化学的性質を理解する上で必要不可欠な原子・分子の化学構造とその性質に関する事項(電子状態論・構造論を扱う量子力学)、(2)分子の集合体(錠剤や液剤などの剤形)に見られる性質や反応(それらは分子単独では見られない)を理解する上で必要不可欠な知識に関する事項(物性論・反応論を扱う熱力学)、(3)その中間的な性質を示す気体現象に関する事項(気体分子運動論を扱う統計力学)がある。(1)に関しては本学では基礎化学・有機化学関連で講義される。従って、「物理化学1」と「物理化学2」では残り重要項目、即ち、(2)および(3)が講義対象となる。即ち統計力学と熱力学を中心に学ぶことになる。
一般に薬学生の多くは「物理化学」を不得手としている。それは、物理化学と言ういかめしい言葉に加えて、その講義において数式表現が多く用いられるからであろう。しかし、簡単な数式表現を理解することは多くの言葉で説明するよりももっと的確にその本質を理解することができる。従って、最低限必要な式は理解せねばならないことを納得し、数式に慣れてもらいたい。本講義では、これまで多くの学生に講義してきた経験に基づいて、理解しにくい事項や誤解しやすい箇所はできるだけゆっくりと説明すると共に、演習等を積極的に取り入れ、出来る限り平易に講義したい。 |
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書名 |
著者名 |
出版社名 |
『薬学のための物理化学』 |
西庄重次郎 (編) |
化学同人 |
『ムーア新物理化学』 |
W.J.Moore (藤代亮一 訳) |
東京化学同人 |
『バーロー物理化学』 |
G.M.Barrow (藤代亮一 訳) |
東京化学同人 |
『基礎化学熱力学』 |
E.B.Smith (小林 宏、岩崎槇夫 訳) |
化学同人 |
『物理化学』 |
石田寿昌 (編) |
化学同人 |
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回 |
項目 |
授業内容 |
1 |
化学反応を支配するエネルギー(1) |
熱力学第二法則、カルノーエンジン |
2 |
化学反応を支配するエネルギー(2) |
効率とエントロピー、エントロピーの温度と圧力、温度と体積の関係式 |
3 |
化学反応を支配するエネルギー(3) |
エントロピー変化とその意味:可逆過程におけるエントロピー変化 |
4 |
化学反応を支配するエネルギー(4) |
エントロピー変化とその意味:不可逆変化におけるエントロピー変化(孤立系での自発変化) |
5 |
化学反応を支配するエネルギー(5) |
エントロピー変化とその意味:一般反応におけるエントロピー変化(閉鎖系)、熱力学第三法則 |
6 |
化学反応を支配するエネルギー(6) |
自由エネルギー:ヘルムホルツに自由エネルギー、ギブスの自由エネルギー |
7 |
化学反応を支配するエネルギー(7) |
化学ポテンシャル、理想溶液での化学ポテンシャル |
8 |
熱力学の応用(1) |
化学平衡と自由エネルギー、化学平衡の温度依存性、ファントホッフの式 |
9 |
熱力学の応用(2) |
相平衡曲線、クタジウス・クラペイロンの式 |
10 |
熱力学の応用(3) |
溶解度の温度依存性、溶液の蒸気圧とラウールの式 |
11 |
熱力学の応用(4) |
希薄溶液の束一的性質(1) |
12 |
熱力学の応用(5) |
希薄溶液の束一的性質(2) |
13 |
まとめ |
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