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薬物治療では、適切な診断に基づき治療薬が選択され、患者に適した投与方法や投与量が決定される。しかし、その治療効果は患者毎に異なるため、患者の様子を観察しながら投与量などを調節しなくてはならない。このとき、薬剤師に求められるのは、薬物の体内動態と患者の生理的および病理的変化との関係に基づき投与方法や投与量を変更できる能力である。
臨床薬物動態の概念は、個々の患者における客観的かつ合理的な薬物治療、すなわちテーラーメイド治療を遂行する上で薬剤師をはじめ医療関係者に必要であるばかりでなく、治験(第I〜III相臨床試験)における薬物動態を適切に解釈、推測する上で臨床開発従事者にも欠くことができない。
本講座の前半では、体内動態の変動要因、集団における薬物動態の解析と個別の体内動態の推定(ポピュレーションファーマコキネティクス:PPK)、薬物動態と薬理効果との速度論的解析(PK-PD)と評価、薬物による時間治療について解説する。後半では、治療的薬物モニタリング(TDM)および薬物動態と薬理効果・重篤副作用や薬物相互作用との関連性について事例をあげ解析することで、臨床薬物動態の基礎理論から実際の臨床応用までを学ばせるものである。
●一般目標(GIO)
薬物治療の個別化に関する基本的知識を習得し、個々の患者に応じた投与計画の立案を目指す。 |
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教科書あるいはプリント等を用いた講義形式で行う。必要に応じてパワーポイントを用いることもある。
●準備学習や授業に対する心構え
PPKの分野では、統計学的な用語と内容が非常に多い。授業までに4年生前期科目「薬物動態学3」の復習とあわせて、「数理統計学」(2年生科目)と「生物統計学演習」(3年生科目)の復習は必須である。
数理統計学分野) 平均と分散、母集団と母集団分布、推定値、正規分布、カイ二乗分布、帰無仮説、対立仮説、棄却域、有意水準、確率変数、確率分布、確率密度関数、最尤原理
生物統計学演習分野) 相関、回帰曲線
●オフィス・アワー
前半) B棟2階/薬剤学研究室(月〜金の10:00〜18:00 但し会議等で不在のときもあります)
後半) B棟2階/臨床薬剤学研究室(月〜金の16:30〜17:30 但し会議等で不在のときもあります) |
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定期試験・課題演習ならびに出席状況より総合的に評価する。 |
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書名 |
著者名 |
出版社名 |
前半) 『広義 薬物動態学』 |
掛見正郎 (編集) |
京都廣川書店 |
後半) 『実践処方例とその解説』 |
田中一彦・井尻好雄・荒川行生 (監修) |
じほう |
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回 |
項目 |
授業内容 |
1 |
体内動態と変動要因1 |
体内動態に対する変動要因の影響を薬物の特性に基づいて分類できる。
【SBO15-(3)-5-1】 |
2 |
体内動態と変動要因2 |
体内動態に対する変動要因の影響を評価・推定でき、投与設計に応用できる。
【SBO15-(3)-5-1】 |
3 |
母集団薬物動態解析1 |
・集団の解析法を説明できる。
・NONMEM法における個体間変動と個体内変動の考え方を説明できる。
【SBO15-(3)-5-2】 |
4 |
母集団薬物動態解析2 |
・NONMEM法による解析結果の妥当性評価を説明できる。
・ベイズ推定法を説明できる。
・ベイズ推定値の意味を説明できる。
【SBO15-(3)-5-2】 |
5 |
PK-PD解析とその評価1 |
薬物の体内動態と効果の速度論的な解析方法を説明できる。
【SBO15-(3)-5-3】 |
6 |
PK-PD解析とその評価2 |
薬物の体内動態と効果の関係を速度論的に評価できる。
【SBO15-(3)-5-3】 |
7 |
時間薬理学と時間治療 |
生体リズムおよび生体リズムを考慮した薬物の用法について説明できる。
【SBO15-(3)-5-4】 |
8 |
TDM総論 |
治療的薬物モニタリング(TDM)の意義を説明できる。 |
9 |
TDMと薬物相互作用(吸収) |
TDMと薬物相互作用(吸収)に関して説明できる。 |
10 |
TDMと薬物相互作用(分布) |
TDMと薬物相互作用(分布)に関して説明できる。 |
11 |
TDMと薬物相互作用(代謝) |
TDMと薬物相互作用(代謝)に関して説明できる。 |
12 |
TDMと薬物相互作用(排泄) |
TDMと薬物相互作用(排泄)に関して説明できる。 |
13 |
TDMと薬物副作用の考え方 |
重篤副作用とその初期症状に関して説明できる。 |
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