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生物無機化学  [Bioinorganic Chemistry]

開講情報
2年次 前期 1単位 必修
担当教員
学長 千熊 正彦    
備考
授業の目的と概要
 約46億年前に誕生した「水の惑星・地球」は、当初は無機物質のみの世界であった。海で最初の生命が誕生し生物進化をくり返してやがてヒトが生まれた。この過程で、生命は身の周りの元素を取り込んでその化学反応性を巧みに利用してきたにちがいない。ヒトの体内には栄養学的に食事からの摂取の必要な必須微量元素(ミネラル)と呼ばれる無機元素が存在することが知られており、それらの元素の機能や動態から生物が無機元素を利用してきた足跡を垣間見ることができる。
 一方、無機化学は、生活用品や医薬品などの材料をつくりだす科学として古い歴史をもち、先人たちの発見した原子、分子、化学結合などに関する普遍的な原理や法則は薬学を学ぶ学生にとって必須の項目である。医薬品の諸性質やそれらの生体内での挙動は、これら原理や法則を基盤として理解される。
 本講義では、元素の一般的性質、化学結合の成り立ち、配位化合物(金属錯体)の構造と反応性、生体内の無機元素の機能、動態、疾病との関連、および金属含有タンパク質の機能、金属含有医薬品の作用などについて、やさしく解説する。
 なお、本講義に関連する既習科目としては、1年次における「化学」、「分析化学」、「基礎細胞生物学1」、「基礎細胞生物学2」などがあるので、復習しておいていただきたい。
授業の方法
主として教科書に沿って講義するが、適宜プリントを配付する。
成績評価法
講義内容に関連した課題に対するレポートおよび定期試験の成績に基づき評価する。
教科書
書名 著者名 出版社名
『生命科学のための無機化学・錯体化学』 佐治英郎 (編) 廣川書店
参考書
書名 著者名 出版社名
『生物無機化学(第2版)』 桜井 弘、田中 久 (編) 廣川書店
『薬学のための無機化学』 桜井 弘 (編) 化学同人
『嫌われ元素は働き者』 日本化学会 (編) 大日本図書
『生命元素事典』 桜井 弘 (編) オーム社
授業計画
項目 授業内容
1 序論:生命と元素 生命に関する元素が周期表に占める位置を確認し、それらが宇宙の歴史や生物の進化とどのような関わりがあるのかを説明できるようになろう。
2 周期表から何がわかるか? 元素の一般的性質にみられる周期律を列挙できるようになろう。
3 化学結合:生体構成分子の機能と医薬品の作用との関わり イオン結合、共有結合、配位結合、分子間力といった化学結合は、生体分子の機能や医薬品の作用に密接な関連をもっている。化学結合やそれに関わる因子を列挙し、生体分子の機能や医薬品の作用を分子レベルで説明できるようになろう。
4 元素の化学(典型元素と遷移元素):生命元素としての性質 生命元素の化学的性質と生体内での機能との関連について説明できるようになろう。
5 配位化合物の立体構造と反応性 ヒトの体内には金属を含むタンパク質や金属酵素が多数存在する。それらの機能を理解するためには、錯体化学の知識が必要である。配位化学(錯体化学)の基礎を説明できるようになろう。
6 錯体化学:遷移金属イオンの水溶液はなぜいろんな色をしているのか? 銅(II)を含むタンパク質が青い色をしている理由およびその銅(II)が還元されて銅(I)になると色が消えてしまう理由は、配位化学の理論から見事に説明することができる。
7 生体内での元素の動態(1) 鉄の吸収、運搬、貯蔵のために生体は合目的的で精緻な仕組みを備えている。鉄の代謝および貧血の診断と治療について説明できるようになろう。
8 生体内での元素の動態(2) 銅、亜鉛の代謝やそれに関連する病気、および経中心静脈栄養療法との関わりについて説明できるようになろう。
9 薬学領域の生物無機化学(1)抗がん剤 代表的抗がん剤の一つである白金製剤(シスプラチン)の作用機序について生物無機化学の立場から説明できるようになろう。
10 薬学領域の生物無機化学(2)薬物代謝酵素 薬物代謝酵素チトクロムP450の活性中心は鉄である。その鉄の役割を説明できるようになろう。
11 薬学領域の生物無機化学(3)重金属に対する生体防御 生体内にカドミウムなど有害重金属が取り込まれると、メタロチオネインという特異なタンパク質が誘導され、重金属は無毒化される。メタロチオネインの性質と働きについて説明できるようになろう。
12 生物無機化学研究法 NMR、ESR、電子スペクトル法などの分光学的分析法が生体分子の機能解析にどのように利用されているのかについて説明できるようになろう。
13 まとめ 本講義に関して、薬剤師国家試験における過去の出題について解説する。
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