HOME  > 学部・大学院 > 研究室一覧 > 環境分子生理学研究室

研究室一覧

環境分子生理学研究室

研究テーマ

ホメオスタシス(生体内環境の恒常性)の維持と脂質関連物質
環境化学物質の生体影響

研究概略

 生物は多種多様な生理活性物質によって生体内環境が維持されていますが、その分子機構についてはまだまだわかっていないことが多くあります。また、人類は生活環境の向上ならびに活発な産業活動の結果として、極めて多くの化学物質を環境中へと放出してきました。私たちの研究室では、脂質関連物質による生体機能調節と、環境化学物質が及ぼす生体影響を分子レベルまで明らかにすることを目的として実験研究を進めています。

スタッフ

教授 藤本 陽子 (薬学博士)

藤本 陽子 (薬学博士)

担当科目
衛生薬学2(3年)、衛生薬学実習(3年)、
特別演習・実習1,2(5,6年)、特別研究(4年)、
薬科学卒業演習(4年) 環境科学特論(大学院)、
領域統合型先端科学特論(大学院)、予防薬学特論I、II(大学院)、
医療薬学総論(大学院)
所属学会
日本薬学会、日本脂質生化学会、日本酸化ストレス学会、
日本ビタミン学会、日本薬理学会

 e-mail

准教授 佐久間 覚 (博士(薬学))

佐久間 覚 (博士(薬学))

担当科目

衛生薬学1(2年)、衛生薬学実習(3年)、薬学英語(4年)、
特別演習・実習1,2(5,6年)、特別研究(4年)、
薬科学卒業演習(4年)、環境科学特論(大学院)、
予防薬学特論I、II(大学院)

所属学会
日本薬学会、日本脂質生化学会、日本酸化ストレス学会、
日本ビタミン学会、日本薬理学会
e-mail

配属学生

【大学院生】   0名
【学部学生】   6年次生:17名、5年次生:17名

キーワード

環境ホルモン、脂質生理活性物質、活性酸素、過酸化脂質、フリーラジカル、癌、肥満、動脈硬化症、糖尿病

研究内容

(1)活性酸素、過酸化脂質の生成と消去に関する研究

 キサンチンオキシダーゼ(XO)はプリン代謝の過程で活性酸素を発生します。生理的状態において,XOはそのほとんどが活性酸素を発生しないキサンチンデヒドロゲナーゼ(XD)の形で体内に存在しています。しかし、虚血などの条件下では、XDはXOへと変換することが知られています。私たちの研究室では、XDからXOへの変換誘導因子と変換抑制因子を明確にする目的で、実験を行っています。今までに、活性窒素種であるパーオキシナイトライト、活性硫黄種であるジスルフィドS-モノオキシド1)、活性塩素種であるモノクロラミンがXOへの内因性変換誘導因子であることや、抗リウマチ薬の副作用の分子メカニズムとしてXOへの変換誘導作用が関わっていることなどを明らかにしています。

キサンチンデヒドロゲナーゼ(XD)からオキシダーゼ(XO)への変換とXOによる活性酸素産生

ジスルフィドS-モノオキシドはラット肝臓細胞内の活性酸素産生を増大させた
(2)アラキドン酸由来生理活性物質の産生調節機構に関する研究

 シクロオキシゲナーゼ(COX)は、アラキドン酸からプロスタグランジン(PG) 、トロンボキサン(TX)などの微量で強力な生理活性をもつ脂質メディエーターを産生する反応の初発酵素です。COXには2種類のアイソザイム(COX-1およびCOX-2)が存在します。COX-1は細胞に広く恒常的に存在する構成型酵素であり、COX-2はサイトカインなどの起炎性物質やホルモンによって新たに産生される誘導型酵素です。私たちの研究室では、COX-1および-2が体の中でどのような活性調節を受けているのか、詳細に検討しています。たとえば、活性窒素種である一酸化窒素(NO)がCOX-1とCOX-2活性に相反する作用を有すること2)、活性塩素種であるモノクロラミンがCOX-1活性抑制作用を介して、血小板の機能を制御していること3)などを明らかにしています。いは宿主の免疫機構から逃れるかを、細菌側と宿主側の両面から解析しています。

体の中でのCOX-1とCOX-2の働きの違い

一酸化窒素(NO)はCOX-1活性を促進するが、
COX-2活性は逆に抑制した。

(3)生活習慣病を誘発する肥満の分子機構に関する研究

 脂肪細胞には生活習慣病に対して防御的に働く小型の良性脂肪細胞と、逆に促進的に働く大型の悪性脂肪細胞の2種類が存在することがわかっています。今までに共役リノール酸が、前駆脂肪細胞から小型の良性脂肪細胞を増やす作用があることを見出しています。このように、脂肪細胞分化誘導の新たな分子機構を探索・解明し、生体に悪影響を及ぼす内臓脂肪型肥満の予防あるいは治療法の確立を目指しています。

 

大型の脂肪細胞


共役リノール酸は大型脂肪細胞の生成を抑制し、小型の脂肪細胞を増加させた(脂肪滴をOil Red Oで染色)。

前駆脂肪細胞からの良性および悪性脂肪細胞への分化誘導

 

(4)肝臓及び大腸における新規制がん剤の開発

 わが国の悪性新生物(癌)による死亡数および患者数は増加の一途をたどっており、その予防的、治療的手段の構築はとても重要なことです。私たちの研究室では、肝臓癌ならびに大腸癌の増殖に対する脂質関連物質の影響を検討しています。今までに、オキソノネナール(4-ONE)4)ならびに共役リノール酸が大腸癌の増殖を強力に阻止することを見出しています。これからも、脂質生理活性物質にターゲットを絞り、新規制がん剤の開発に繋げたいと考えています。


 

DNA断片化部位を示す。

オキソノネナール(4-ONE)は大腸癌細胞の増殖を低濃度から阻止した。

オキソノネナール(4-ONE)は大腸癌細胞核DNAの断片化を増大させた。

(5)環境汚染物質の生体影響に関する研究

 環境汚染物質は多種ありますが、その中で環境ホルモン(内分泌撹乱化学物質)に関してはこれまで、生殖機能に対する影響が広く調べられてきました。私たちの研究室では、環境ホルモンによる新たな毒性発現機構について、上記(1)〜(4)の実験系を用いて検討しています。今までに、ノニルフェノール(NP)がCOX-2ではなくCOX-1を選択的に阻害すること5)、ビスフェノールA(BPA)が前駆脂肪細胞を悪性の大型脂肪細胞へと分化することなどを明らかにしています。これからも各種環境化学物質の生体影響について検討していきたいと考えています。

様々な環境ホルモンのなかで、ノニルフェノール(NP)はCOX-1活性を選択的に阻害した。

環境ホルモンであるビスフェノールA(BPA)はPPARγ、Proliferinを介して悪性の大型脂肪細胞を増大させた。

参考論文

  1. 1) Biol. Pharm. Bull. 31, 1013-1016 (2008)
    2) Prostaglandins Leukot. Essent. Fatty Acids 71, 335-340 (2004)
    3) Biochem. Biophys. Res. Commun. 344, 140-145 (2006)
    4) J. Clin. Biochem. Nutr. 45, 171-177 (2009)
    5) Life Sci. 70, 2209-2214 (2002)

代表的論文

2016年
  1. Kohda T, Sakuma S, Fujimoto Y: Vitamin E-like molecules potentiate the curcumin-induced suppression of Caco-2 cell proliferation., S. Sakuma, M. Abe, and Y. Fujimoto, Int. J. Pharmacol. Res., 6: 41-46, 2016
2015年
  1. Sakuma S, Abe M, KohdaT, Fujimoto Y: Hydrogen peroxide generated by xanthine/xanthine oxidase system represses the proliferation of colorectal cancer cell line Caco-2., J. Clin. Biochem. Nutr., 56: 15-19, 2015
2014年
  1. Kohda T, Sakuma S, Abe M, Fujimoto Y: Monochloramine suppresses the proliferation of colorectal cancer cell line Caco-2 by both apoptosis and G2/M cell cycle arrest., Cell Biochem. Funct., 32: 188-193, 2014
  2. Sakuma S, Maruyama C, Kohda T, Fujimoto Y: Curcumin inhibits the proliferation of a human colorectal cancer cell line Caco-2 partially by both apoptosis and G2/M cell cycle arrest., Int. J. Pharmacol. Res., 4: 84-90, 2014
2012年
  1. Sakuma S, Fujisawa J, Sumida M, Tanigawa M, Inoda R, Sujihera T, Kohda T, Fujimoto Y: The involvement of mitogen-activated protein kinases in the 1α,25-dihydroxy-cholecalciferol-induced inhibition of adipocyte differentiation in vitro., J. Nutr. Sci. Vitaminol., 58: 1-8, 2012
  2. Sakuma S, Kitamura T, Kuroda C, Takeda K, Nakano S, Hamashima T, Kohda T, Wada S, Arakawa Y, Fujimoto Y: All-trans Arachidonic acid generates reactive oxygen species via xanthine dehydrogenase/xanthine oxidase interconversion in the rat liver cytosol in vitro., J. Clin. Biochem. Nutr., 51: 55-60, 2012
2010年以前
  1. Sakuma S, Fujii Y, Abe M, Arakawa Y, Fujimoto Y: Perfluorinated carboxylic acids inhibit cyclooxygenase pathway more potently than 12-lipoxygenase pathway in rat platelets., Prostaglandins Leukot. Essent. Fatty Acids, 83: 225-228, 2010
  2. Sakuma S, Negoro M, Kitamura T, Fujimoto Y: Xanthine oxidase-derived reactive oxygen species mediate 4-oxo-2-nonenal-induced hepatocyte cell death., Toxicol. Appl. Pharmacol., 249: 127-131, 2010
  3. Sakuma S, Miyoshi E, Sadatoku N, Fujita J, Negoro M, Arakawa Y, Fujimoto Y: Monochloramine produces reactive oxygen species in liver by converting xanthine dehydrogenase into xanthine oxidase., Toxicol. Appl. Pharmacol., 239: 268-272, 2009
  4. Fujimoto Y, Morinaga K, Abe M, Kitamura T, Sakuma S: Selenite induces oxidative DNA damage in primary rat hepatocyte cultures., Toxicol. Lett., 191: 341-346, 2009


ページトップ