薬学紹介

薬学紹介 受験生向け研究室紹介

基礎薬学教育研究センター

教授 大桃 善朗 (薬学博士)

教授 大桃 善朗 (薬学博士)

担当科目 化学(1年)、 化学演習(1年)、放射化学(3年)、
応用放射化学(3年)、 基礎薬学実習(1年)、
物理・放射化学実習(2年)、
生体機能分析学特論(大学院)
所属学会 日本薬学会、日本薬学教育学会、日本核医学会、
日本分子イメージング学会
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教授 井上 晴嗣 (理学博士)

教授 井上 晴嗣 (理学博士)

担当科目 生化学2(2年)、生体分子機能学(4年)、
生物科学実習(3年) 、 生物科学特論(大学院)、
分子構造・機能解析学I、II、III(大学院)
所属学会 日本生化学会、日本薬学会、日本蛋白質科学会、
日本薬学教育学会、
International Society on Toxinology
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教授 尾﨑 惠一 (博士(薬学))

尾﨑 惠一 (博士(薬学))

担当科目 生物学(1年)、機能形態学1(1年)、
生物学実習(2年)、 生物科学特論(大学院)
所属学会 日本薬学教育学会、日本薬学会、日本生化学会、
日本分子生物学会、日本内分泌学会、日本癌学会、
日本がん分子標的治療学会(評議員)
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准教授 佐藤 卓史 (博士(薬学))

佐藤 卓史 (博士(薬学))

担当科目 分析化学2(2年)、応用分析学(3年)、
生体分析化学(4年)、 分析化学実習(2年)、
生体機能分析学特論(大学院)
所属学会 日本薬学教育学会、日本薬学会、日本分析化学会
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 2016年4月にスタートした基礎薬学教育研究センターでは、アクティブラーニングやITを取り入れた効果の高い双方向性教育手法の開発や導入、その評価や検証といった教育に関する研究を目指します。また、学生の卒業率や国試合格率向上のために、大学入試結果や授業の出席率、成績などを一括データ管理し、卒業率、国試合格率との相関性などについても今後調査していく予定です。さらに、各学生さんのデータを集約させた“学生カルテ”を利用した教職員によるサポートも検討しています。それらと合わせて、学生の日々の学習を支援する目的で、担当科目以外の質問にも積極的に応じています。
基礎薬学を十分に理解していることは、臨床現場での薬剤師や研究者の大きな武器となります。そこで、研究成果を基礎薬学教育の充実に役立てようと考えています。
以上のようなセンター教員一丸となって行う今後の教育研究活動に期待していただきたいと思います。

研究テーマ

センターとしての研究課題
(1)新たな薬学教育の構築

各教員の研究課題

[大桃善朗教授]
(2)分子イメージングによる画像診断用医薬品の開発

[井上晴嗣教授]
(3)血清タンパク質の構造と機能
   1. ホスホリパーゼA2阻害タンパク質の構造と阻害機構の解明
   2. ロイシンリッチα2グリコプロテイン(LRG)の機能解明

[尾﨑惠一教授]
(4)シグナル伝達病(がん・糖尿病等)に対する効果的薬物治療法の開発
   1. ERK~MNKプロテインキナーゼを介した炎症反応の分子機構
   2. ERK~MNKプロテインキナーゼ経路遮断による抗がん剤感受性増強機構
   3. 遺伝子抑制による効果的薬物治療法の開発

[佐藤卓史准教授]
(5)シスプラチン耐性がんに有効な新たな制がん性金属錯体の開発

研究概要

 基礎薬学教育研究センターでは、センターとしてアクティブラーニング等の教育手法の薬学教育への導入や双方向性授業を推進するためのICT導入を行うとともに、それらの教育効果の検証を研究テーマの一つにしています。また、配属学生に対して、ファシリテータ・スキルやピア・チューターとしての能力を修得してもらい、それを教育に生かすとともに、その教育効果の検証を行っていきます。さらに、入学時の学力や日々の学習習慣、学生生活等が学業に与える影響に関して、継続的な調査研究を行っていきます。将来的には、地域住民を対象としたメディカル・カフェを配属学生に運営してもらいたいと考えています。これらの学生に修得してもらう能力は、大学にいる間に役立つだけでなく、将来、指導薬剤師として実務実習生を指導する場合に直接役立つスキルであるとともに、臨床の現場において、患者さんや他職種の医療従事者と接する場合にも大変役にたつ能力です。
 一方、各教員はそれぞれのテーマを持って実験を伴う研究を行っています。

キーワード

教育、アクティブラーニング、ファシリテータ、ピア・チューター、メディカル・カフェ、分子イメージング、
画像診断、ホスホリパーゼA2、ヘビ毒、阻害タンパク質、血清タンパク質、ロイシンリッチα2グリコプロテイン、
シトクロムc、がん、抗がん剤、ERK-MAPキナーゼ、キナーゼ阻害剤、HDAC阻害剤、シグナル伝達、
メタボリックシンドローム、糖尿病、白金、金属錯体、DNA

学習支援活動

(1)センターを来訪した学生の学習支援

 基礎薬学教育研究センターが実質的に始動して以降(2016年7月~2017年1月)に質問のためにセンターを訪ねてきた学生は、把握できている範囲で、延べ103人 複数回訪れた学生の重複を除いた実数で75名でした。1回当たりの質問時間は平均38分間でした。

基礎薬学教育研究センター来訪学生数(2016年7月~2017年1月)
学年別 月別
延べ人数 実数 延べ人数
1年次生 27 10 7月 62
2年次生 38 29 8月 10
3年次生 34 32 9月 2
4年次生 3 3 10月 3
5年次生 0 0 11月 2
6年次生 1 1 12月 16
1月 7

 来訪者の数は2・3年次生が多かったですが、これは、センター教員が担当する講義や実習の開講年次の影響が大きいものと考えられます。また、2・3年次生、特に3年次生の来訪は単回のみのことが多かったのに対して、1年次生は来訪してきた学生数は少ないものの、多くが複数回訪れていました。4年次生は3名がそれぞれ1回、6年次生は1名が1回訪れただけでした。5年次生の来訪はありませんでした。
 月別では、定期試験直前の7月、12月の来訪者数が多かったです。同じ試験前でも、7月に比べ12月が1/4以下の人数なのは試験日程との関係と思われます。また、それ以外の期間の来訪者は大半が1年生でした。
多くの学生が、自身の学力に不安があって質問に訪れましたが、中には十分な学力を持つ学生が、より深い理解を求めてやってくることもありました。
 以上のように、日頃から勉強するといった学習意欲は、学年の進行に伴い低下していくことがここからも見て取れ、できるだけ低学年のうちに学習習慣を身につけさせるための対策が必要と思われました。

(2)分析化学TBLの実施

 2016年度後期に、1年次生希望者、特に化学に対して苦手意識を持っている可能性のある学生に呼び掛けて、分析化学1の補講として、反転授業とチーム基盤型学習(team-based learning: TBL)を組み合わせた「分析化学TBL」を実施しました。1年次後期は、午後に実習があるため、実習のない期間にA、Bクラスごとに、週1回2時間、5回のコースとしました。正規の科目ではないため、単位の付与や出席の義務付けは行いませんでした。今回の「分析化学TBL」は学生に予習するという学習習慣をつけてもらい、その学力の向上を目指すことを主たる目的としていましたが、同時に本学におけるアクティブラーニング導入の先鞭として、その効果の検証と教授手法の紹介の意味合いを持つものでした。そのため、本補講を教員に公開しました。
以下に実施の概要と実施時の模様を示します。

参加希望学生数
Aクラス 22名
Bクラス 30名
学生の参加回数
5回 9名(Aクラス 3名、Bクラス 6名)
4回 12名(Aクラス 5名、Bクラス 7名)
3回 8名(Aクラス 3名、Bクラス 5名)
2回 9名(Aクラス 1名、Bクラス 8名)
1回 10名(Aクラス 7名、Bクラス 3名)
0回 4名(Aクラス 3名、Bクラス 1名)
内容
1回目 酸塩基1「多塩基性酸、両性電解質水溶液等のpH」
2回目 酸塩基2「緩衝液のpH、電解質の分子型イオン型のモル分率とpHとの関係」
3回目 溶解平衡
4回目 酸化還元1「標準電位と酸化還元反応」
5回目 酸化還元2「ネルンスト式を用いた電極電位の算出」
参観教員数 17名

総括
薬品分析化学研究室教授 三野芳紀先生にご協力いただき、三野先生御担当の分析化学1の定期テストについて、分析化学TBLを1回以上受講した学生の成績を検討しました。TBL受講生の得点は平均で70.9点であり、全受験者の平均74.3点を3ポイントほど下回っていました。また、定期試験で合格した学生の比率は、TBL受講者で66.0%となり、全受験者における72.5%を6.5ポイントほど下回っていました。また、受講回数と成績に大きな関連は見られませんでしたが、5回受講した学生のうち2名は満点に近い成績でした。
 学生に実施したアンケートの結果、“TBL”という授業形態に関しては、概ね、肯定的に捉えており、「他者の考え方を聞けて良かった」、「同じ目線の学生に教えてもらったり、教えたりすることで理解が深まった」等のコメントが多くみられました。一方、当初の目的の一つとしていた予習の習慣を養う“反転授業”に関しては、多くの学生が予習せずにTBLに臨んでおり、反転授業用の動画すら全く見ていない学生が半数を超えていました。ただ、分析化学1の定期試験合格者の多くは、動画を見て予習していた学生でした。
 このように、今回の試みが学生の学力向上に寄与したか否かを一概に断ずるのは難しいものの、今回の希望者が化学を苦手とする層の学生であったことを考え合わせると、ある程度の効果があったとも考えられます。特に、熱心に取り組んだ学生の学習意欲の向上や学習内容の理解の深化に一定の効果があるものと考えられました。今後、今回の経験を生かして、反転授業での予習の徹底、ファシリテータの養成など、いくつかの点を改善し、学生の学習支援へとつなげていきたいと思います。

研究内容

(1)新たな薬学教育の構築

薬学専門系の授業におけるアクティブラーニングの導入とその成果の検証
学生のファシリテータ・スキルの修得・向上とその教育効果の検証
学生ピア・チューター養成とその教育効果の検証
学習習慣や学生生活が学業に与える影響の調査研究

(2)分子イメージングでがんの早期画像診断を目指す

[大桃善朗教授]

 生体内で起こる様々な生命現象を、生きた状態のまま外部から分子・細胞レベルで捉えて、画像として観察できるようにする分子イメージングは、病気を早期に正確に発見することができる新しい診断法として注目されている。

 腫瘍の分子イメージングに基づく画像診断は、腫瘍に内在する様々な性質に関する情報を、イメージングという非侵襲的かつ全身検索可能な方法で評価する診断法である。この方法は診断だけでなく、多様な腫瘍の個性に見合った治療計画の策定、治療効果の予測や正確な判定など、個々の患者に対する個別化医療への貢献が期待されている。
 このような分子イメージングによる病気の診断に用いられる新しいタイプの医薬品の開発を目指して、腫瘍細胞に発現した特異的分子を標的とする分子イメージング薬剤や、中枢神経疾患の診断のための分子イメージング薬剤など、種々の分子イメージング薬剤の開発研究を行っている。

  

(3)血清タンパク質の構造と機能

[井上晴嗣教授]

1.

ホスホリパーゼA2(PLA2)阻害タンパク質(PLI)の構造と阻害機構の解明
 これまでにマムシやハブなどの毒ヘビの毒液中に多量に含まれるPLA2を阻害するタンパク質を、毒ヘビ血液から精製し、構造的特徴および阻害の特異性が互いに異なる3種類の阻害タンパク質(PLIα、PLIβ、PLIγ)を見いだしました。そのうちPLIαはC型レクチン用ドメイン(CTLD)を持つ3量体構造を形成しており、1分子のヘビ毒II型酸性PLA2にこの3量体PLIαが結合することによってPLA2活性を阻害していることがわかりました。そこでこの結合様式を明らかにするため、PLA2・PLIα複合体を結晶化してその複合体の立体構造を明らかにしたいと考えています。また、同様にPLIβやPLIγについてもPLA2阻害機構を解明したいと考えています。

参考論文

1)

Nishida M, Okamoto M, Ohno A, Okumura K, Hayashi K, Ikeda K, Inoue S: Inhibitory activities of the heterotrimers formed from two α-type phospholipase A2 inhibitory proteins with different enzyme affinities and importance of the intersubunit electrostatic interaction in trimer formation. Biochem. Biophys. Acta, 1804 2121-2127, 2010

2)

Kinkawa K, Shirai R, Watanabe S, Toriba M, Hayashi K, Ikeda K, Inoue S: Up-regulation of the expressions of phospholipase A2 inhibitors in the liver of a venomous snake by its own venom phospholipase A2. Biochem. Biophys. Res. Commun., 395: 377-381, 2010

3)

Shirai, R., Toriba, M., Hayashi, K., Ikeda, K., and Inoue, S.: Identification and characterization of phospholipase A2 inhibitors from the serum of the Japanese rat snake, Elaphe climacophora. Toxicon, 53: 685-692, 2009

4)

Shimada A, Ohkura N, Hayashi K, Samejima Y, Omori-Satoh T, Inoue S, Ikeda K: Subunit structure and inhibition specificity of α-type phospholipase A2 inhibitor from Protobothrops flavoviridis. Toxicon, 51: 787-796, 2008

5)

Okumura K, Ohno A, Nishida M, Hayashi K, Ikeda K, Inoue S.: Mapping the region of the α-type phospholipase A2 inhibitor responsible for its inhibitory activity. J. Biol. Chem., 280: 37651-37659, 2005

6)

Okumura K, Ohkura N, Inoue S, Ikeda K, Hayashi K: A novel phospholipase A2 inhibitor with leucine-rich repeats from the blood plasma of Agkistrodon blomhoffii siniticus. J. Biol. Chem., 271: 19469-19475, 1998

7)

Inoue S, Kogaki H, Ikeda K, Samejima Y, Omori-Satoh T: Amino acid sequences of the two subunits of phospholipase A2 inhibitor from the blood plasma of Trimeresurus flavoviridis. J. Biol. Chem., 266: 1001-1007, 1991

2.

ロイシンリッチα2グリコプロテイン(LRG)の機能解明
私たちが毒ヘビ血液から発見したPLA2阻害タンパク質の一つであるPLIβは、ヒト血液中に存在する機能未知のタンパク質であるロイシンリッチα2グリコプロテイン(LRG)とアミノ酸配列上の相同性が高いことから、LRGはPLA2阻害タンパク質ではないかと考えていました。しかし、マウス血液から精製したLRGにはPLA2阻害活性は見られず、ミトコンドリアの電子伝達体として機能するシトクロムcと特異的に結合すること、細菌感染などの急性炎症の際に急激に肝臓で発現する急性期タンパク質の一つであることなどがわかりました。LRGとPLIβの機能比較や、LRG遺伝子ノックアウトマウスの作製を介してLRGの生理的な機能について明らかにしたいと考えています。

参考論文

1)

Shirai R, Gotou R, Hirano F, Ikeda K, Inoue S.: Autologous extracellular cytochrome c is endogenous ligand for leucine-rich α2-glycoprotein and β-type phospholipase A2 inhibitor. J. Biol. Chem., 285: 21607-21614, 2010

2)

Shirai, R, Hirano F, Ohkura, N, Ikeda K, and Inoue S: Up-regulation of the expression of leucine-rich α2-glycoprotein in hepatocytes by the mediators of acute-phase response. Biochem. Biophys. Res. Commun., 382: 776-779, 2009

(4)シグナル伝達病(がん・糖尿病等)に対する効果的薬物治療法の開発

[尾﨑惠一教授]
 京都大学から長崎大学に移動後、研究テーマを細胞表面イベントから細胞内シグナル系へとシフトさせ、細胞増殖・分化シグナルの中心をなすERK(MAPキナーゼ)経路と生存・細胞運命決定に関わるPI3キナーゼ(PI3K)/Akt経路という、多細胞生物の恒常性維持に極めて重要な二大経路に焦点を当てた。特に、がんや糖尿病などの難治性疾患において、がん細胞や脂肪細胞レベルでERK経路の活性亢進を見出し、これらをシグナル異常亢進によるシグナル伝達病と考え、シグナル遮断薬による抗がん、抗糖尿病作用をこれまで明らかにしてきた[Biochem. Biophys. Res. Commun. (2006, 2009, 2010, 2013), Clin. Cancer Res. (2010), Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. (2016)]。本校着任後は、さらに生化学研究室・福永理己郎教授の発見されたERK下流のMNKプロテインキナーゼにも注目した以下のような共同研究を展開していく予定である(1, 2)。また、星薬科大学医療薬剤学教室・服部喜之准教授との共同研究として、効果的な薬物治療を目指した動物モデル実験も行っていく(3)。

1,

ERK~MNKプロテインキナーゼを介した炎症反応の分子機構
~新たな糖尿病治療法の開発をめざして~

2,

ERK~MNKプロテインキナーゼ経路遮断による抗がん剤感受性増強機構
~効果的がん化学療法の開発をめざして~

3.

遺伝子抑制による効果的薬物治療法の開発
~動物モデルによる薬物治療効果in vivo評価

CG-1 Br

(5)シスプラチン耐性がんに有効な新たな制がん性金属錯体の開発

[佐藤卓史准教授]
 シスプラチンは臨床で最もよく使用されている抗がん剤です。しかし、シスプラチンを用いた治療を行っていると、シスプラチンが効かなくなってしまうことがあります。ほとんどの場合、この耐性がんに対しては、シスプラチン以外の白金制がん剤も無効です。そこで、私は、シスプラチン耐性がんに有効な新たな金属化合物を探索し、いくつかの候補となる化合物を見出しました。その中に下に示した一連の化合物がありますが、これらは2価の陽電荷をもっています。現在、臨床で用いられている白金抗がん剤はすべて電荷を持っていません。ところが最近、陽電荷を持つ多くの白金錯体で抗がん活性が見出されて、その作用機構が大きな注目を集めています。これら以外にも白金やルテニウム、パラジウムなどを含む錯体についても研究を行っています。現在は、それらの化合物の作用機構を培養細胞やDNA、酵素などを用いて明らかにし、そこから得られた情報を基に、より効果の高い化合物を合成しようとしています。




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