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薬物治療学II研究室

教授 島本 史夫 (医学博士)

担当科目 人体の構造と機能(1年)、
医療総合人間学1・2(1年)、
病態生理学1(1年)、早期体験学習2(1年)、
人間と分化5(2年)、薬物治療学2(4年)、
病態生理学演習実習(5年)、
薬物治療学演習(6年)
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講師 山口 敬子 (博士(薬学))

担当科目 薬局方総論(6年)、薬物治療学(6年)、
薬学総合演習(6年)、 臨床化学(3年)、
人体の構造と病態1(1年)、
病態生理学演習実習(5年)、
早期体験学習2(1年)、 早期体験学習1(1年)
所属学会 日本薬学会、日本分析化学会
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配属学生

【大学院生】   0名
【学部学生】   6年次生:8名、5年次生:8名

研究テーマ

  1. 島本史夫教授
    1)消化管粘液の組成・合成・分泌に関する生理・生化学的研究
  2. 2)気道上皮線毛運動の生体防御調節機構に関する生理学的研究
  3. 3)消化管の運動・消化・吸収・排泄など生体機能に関する研究
  4. 4)消化器疾患・高齢者疾患の病態生理に関する臨床疫学的研究

  5. 山口敬子講師
    光を用いて病気を測る

研究概要

島本史夫教授
 薬物治療学II研究室は平成23年10月1日付けで新設され、平成25年4月から本格的に活動を開始しました。
 薬学と医学とを結ぶ研究室で、疾病の病因・病態生理や薬物の効果・作用機序を基礎実験と臨床研究の双方から明らかにして、病気の治療や予防に貢献できることを目指しています。
生命維持に必要な消化・吸収・排泄などの機能を担う「腸管」は人体の中で最も起源が古い重要な器官ですが、炎症・癌などの疾患や機能異常による症状の発生頻度も多く、日常生活活動や生命予後にも大きな影響を与えます。大阪医科大学との共同研究(生理学教室中張プロジェクト)で、私達の体を守るためのバリアーとして重要な胃粘膜の粘液分泌(胃酸・薬物から胃を保護)や気管上皮の線毛運動(異物・細菌除去で肺を保護)についてイオン輸送活性化による機能の調節や薬物の効果を細胞レベルで解明しています。消化吸収や胃腸運動など生体機能の生理的・加齢・病的変化を呼気ガス測定や電気生理学的な手法で研究し、生活習慣病や習慣飲酒などに対する疫学研究で病気の原因を調べています。病態解明など基礎研究と治療法・予防法開発など臨床研究の両面から医療に貢献できる幅広い研究をしています。
 臨床薬剤師は、医療現場で「薬の専門家」としてのプロフェッショナリズムを持って積極的に意見を述べることが求められ、同時に患者のコンプライアンスや身体的・心理的アウトカムの改善をもたらす良好なコミュニケーション能力も要求されます。研究活動を通じて、薬物の専門家として科学的に思考ができると同時に、医療人として病める人を思いやることができる臨床薬剤師の育成を目的としています。
 新研究室は平成24年7月からB棟6階に移動しました。高槻市から大阪市街までを一望できる明るい研究室です。興味ある方はぜひ覗いてください。熱意と気力のある学生、好奇心と探求心の旺盛な学生、明るく笑顔のすてきな学生、皆さん大歓迎です。

山口敬子講師
現代医療の目覚しい進展は,臨床化学の著しい進歩に負うところが大ですが,臨床化学は,分析化学と病態化学との2つの大きな柱を基盤にしています.当研究室は,その前身が薬品分析学教室ですので,その特長を十分生かしながら,「光を用いて病気を測る」をメインテーマにして多くの病態関連物質,(1)腎疾患マーカー (2)腫瘍マーカー (3)メタボリックシンドロームマーカー (4)酸化ストレスマーカー などについての新しい測定法の開発,更には新規光化学プローブの創出などについて探索しています.「挨拶を忘れず,元気よく,ケジメをつけて」をモットーに,「信頼性のある測定値」を目標にして,日々賑やかに実験しています.

キーワード

山口敬子講師
病態関連物質,光分析法,光化学プローブ

研究内容(島本史夫教授)

(1)消化管粘液の組成・合成・分泌に関する生理生化学的研究

1)胃粘液細胞単離培養と粘液生合成に関する研究

胃粘液は粘膜表層の被蓋上皮細胞(青色)と深部の副細胞(茶色)から分泌され、交互に層状のゲル層を形成して胃粘膜を保護している(堀田恭子:胃粘液の魅力を探る)。世界で初めてヒト胃単離粘液細胞培養系を確立して細胞単位での検討を可能にした。プロスタグランジン(PGE2)は粘液合成を増加させ、アルコールやNSAIDsは粘液合成を低下させたが、PGE2前処理で合成低下は抑制された。酸分泌刺激物質であるアセチルコリン・ヒスタミン・ガストリンが粘液合成も増強させ、酸(攻撃因子)分泌と粘液(防御因子)合成とが生体内でバランスをとって粘膜防御機構として合目的的に調整されていることを解明した。


2)胃粘液細胞開口放出と細胞内情報伝達系に関する研究

ビデオ強調型顕微鏡システムを用いて生きたままの胃粘液細胞から粘液顆粒の開口放出(分泌)現象を直接観察することができる。胃粘液開口放出は主にCa2+調節性であり、アセチルコリン(Ach)刺激により活性化された。Ach刺激は細胞内Ca2+濃度を上昇させてPLA2とCOX1を活性化し、アラキドン酸とPGE2を増加させた。PGE2はEP4レセプターを刺激して、細胞内にcAMPの集積を引き起こした。このcAMP集積がCa2+により活性化された開口放出を増強していた。また、アラキドン酸はPPARαを刺激してCa2+調節性開口放出を増強していることが示された。このことから、胃粘液細胞ではPGE2を介したオートクリン機構が存在し、Ca2+調節性開口放出による粘液分泌維持に重要な役割を果たしていることが示された。NSAIDsはCOXを阻害することによりオートクリン機構を抑制して開口放出を約50%減少させ、この粘液分泌の減少がNSAIDsによる粘膜障害の一因であることが示唆された。アラキドン酸自身が胃粘膜保護作用を有している可能性も示唆され、胃粘膜障害の予防・治療法の開発も視野においた研究を行っていく。 本研究は大阪医科大学生理学教室中張プロジェクト(主管)との共同研究である。


(2)気道上皮線毛運動の生体防御調節機構に関する研究

肺の重要な防御機構として気道上皮に粘液細胞(粘液分泌)と線毛細胞(線毛運動)が存在する。気道へ吸入した異物(埃、花粉、細菌など)を粘液で捉え、線毛運動により痰として体外へ排出する粘液線毛クリアランスは、異物除去のためのベルトコンベアーシステム(気道表面の粘液層はコンベアーベルト、線毛運動はベルトを動かすモーターの作用)に例えられる。高速度カメラ装着顕微鏡システムにより単離細気管支上皮細胞を生きたまま、1本の線毛運動を高時間分解能(1/500~1/1,000秒)で観察が可能となった。本システムによる解析の結果、線毛運動周波数と線毛運動振動角が線毛運動の評価に重要であり、イオン輸送活性化による細胞内pHやイオン濃度変化が線毛運動を活性化していることを明らかにした。去痰薬として一般に使用されている薬物の作用機序がCl-/HCO3-交換輸送2(anion exchanger 2)の活性化(HCO3-の細胞内取り込みとCl-排出)による線毛運動活性化であることが解明された。気道線毛運動障害により気管支拡張や気道易感染性などが認められるため、線毛運動の病態生理・調節機構や薬物効果・作用機序を解明することにより、呼吸器疾患の予防や治療に貢献できる研究を行っていく。本研究は大阪医科大学生理学教室中張プロジェクト(主管)との共同研究である。








(3)消化管運動・消化・吸収・排泄などの生体機能に関する研究

1)胃電図法による胃運動機能に関する研究

腹壁から経皮的に胃電気活動を記録することにより胃運動を推測する非侵襲的な検査法(胃電図)の臨床応用が始められた。胃平滑筋から発生する周期的な電気活動(electrical control activity)が胃体上部大彎側付近のペースメーカーから1分間におよそ3回の割合で幽門側へ伝播していくことが判明している。若年者群では平均周波数は食後に有意に増加していたが、高齢者群では有意に減少し、胃排出時間も遅延していることから、高齢者では食後の胃運動機能低下が推察された。高齢者における胃運動機能低下は消化管運動亢進薬(5-HT4受容体刺激薬)の内服により若年者群とほぼ同じレベルまで改善することが明らかになった。高齢者の胃運動機能低下は加齢に伴う生体に必要なエネルギーの経口摂取量を調節する可逆的な適応反応であることが示唆された。高齢者の栄養管理への応用も期待できる。


2)糖尿病合併高脂血症と小腸脂質吸収機能に関する研究

糖尿病には高率に高脂血症が合併し、動脈硬化性疾患の発症と密接な関係がある。脂質の調節には食餌性脂肪を吸収する小腸の役割が重要である。糖尿病(I型・II型)モデルラットを作成し、糖尿病発症後の13C-acetate呼気試験(胃排泄時間)および13C-trioctanoin呼気試験(脂肪吸収機能)により呼気中のΔ13CO2濃度を計測し、小腸絨毛上皮の高さ(過形成性変化)を測定した。糖尿病ラットでは対照群と比較して血中総コレステロール、トリグリセリドが有意に高値で、小腸絨毛は高くなり過形成性変化を示し、脂肪吸収が亢進していたが、胃排泄時間遅延はみられなかった。小腸絨毛の過形成(吸収面積の増加)と脂肪の吸収亢進あるいは吸収総量増加の相関が示唆された。糖尿病に合併する高脂血症(特に高トリグリセリド血症)は、小腸からの脂肪吸収過剰が病因の一つと推察された。糖尿病罹患期間、食事内容、血糖値コントロール状態など種々の因子を検討することにより、メタボリックシンドロームの治療、予防への応用も期待できる。


3)アンモニアバイオセンサーによる呼気中アンモニア濃度測定と高アンモニア血症治療法に関する研究

肝硬変患者における高アンモニア血症は肝性脳症を引き起こし、肝性口臭を伴うことはよく知られているが、呼気中のアンモニア濃度に関してはあまり知られていない。アンモニアバイオセンサーを開発し、血中および呼気中アンモニア濃度が正の相関を示すことを明らかにした。ラット肺胞細胞を用いた生理学的な研究により、 肺胞上皮にはアンモニアの能動的排泄機構が存在していることを見いだした。「肺は排泄臓器である」という新しい概念を基にして、安全・簡便・非侵襲的で、瞬時に結果が判明する呼気による早期診断・治療効果判定法と、呼気中アンモニア排泄の活性化による高アンモニア血症治療法の開発を目的とした研究を行っていく。


4)消化器・高齢者疾患の病態生理に関する臨床疫学的研究

  1. (1)ヘリコバクター・ピロリ菌感染の臨床疫学的研究
  2. (2)アルコール長期摂取と胃粘膜病変に関する臨床的研究
  3. (3)酸分泌抑制薬内服と消化管感染症に関する臨床的研究
  4. (4)消化管内視鏡検査時の心負荷に関する臨床的研究
  5. (5)高齢者血液検査値の基準に関する臨床統計学的研究

研究内容(山口敬子講師)

(1)病態関連物質の測定法の開発

  • ・腎機能障害による透析患者が毎年1万人ずつ増え続けており,大きな社会問題となっています.このような腎機能障害,特に最近,糖尿病性腎症の早期発見,診断,治療効果の確認などにおいて尿タンパク質,尿微量アルブミンの測定値が重要な指標となります.当研究室では,尿タンパク質測定のためのピロガロールレッド法を開発しましたが,本法は現在我が国の尿タンパク質定量法の8割以上を占めており,また髄液中のタンパク質の測定にも広く用いられています.現在尿微量アルブミンの測定法について検討しています.



  • ・臨床検査現場では,非侵襲性で常時得られる随時尿を試料とする場合が多いのですが,随時尿は希釈されたり,濃縮されたりしている場合が多く,対象物質の正しい測定評価がされ難い欠点がありますので,これを回避するためには尿中のクレアチニンを同時に測定して補正することが必須です当研究室は,新しい尿クレアチニン測定法を開発し,試験紙法として実用化しています.


  • ・ポリアミンは,3個以上のアミノ基を持つ非タンパク性の脂肪族アミンの総称で,生体内では主に,胸腺,前立腺,膵臓などの核酸やタンパク質合成の盛んな組織に含まれており,白血病,悪性リンパ腫,消化器がん,肺がんなど多くのがん,特に進行性の場合には,尿中排泄量の増加などが見られますので,臨床上ポリアミン(特にスペルミン)の測定は,悪性腫瘍診断の補助,術後化学療法後の効果判定等に大変有用です.また,ポリアミンは老化とも関連があり,高ポリアミン食が動脈硬化抑制作用,抗老化作用として注目されており,高感度な測定法の開発が熱望されています.



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    ・近年,メタボリックシンドロームが非常に注目されていますが,危険因子としての肥満,高血圧症,脂質異常症,糖尿病などの生活習慣病が,本病態と密接に関わっています.これら生活習慣病集積の背景には,インスリン抵抗性や高インスリン血症が関与すると考えられていますので,インスリン測定法の開発は,糖尿病の早期発見,さらにはメタボリックシンドロームマーカーとしても極めて有益です.


(2)新規光化学プローブの創製とその応用

  • ・がん,炎症,循環障害や老化など種々の病態や生理機能に関連するO2-,H2O2,・OH,1O2などのROSにおいては,それぞれ個々の化学種のための多くの測定法が開発されていますが,ROSと病態との関連性を考察する場合,個々のROSを測定するよりもこれらの総和を測定する方が実用的で有用です.ROSの新規測定法の開発に際し,光化学プローブとして種々の優れた特性を有するキサンテン系色素の新しい光化学プローブを創製し,その分子構造学的特性について精査しています.


  • ・蛍光プローブを細胞内に取り込ませ,蛍光顕微鏡を画像解析することで,細胞が生きたままの状態で特定の生理活性物質の動的な濃度変化をリアルタイムに測定する(バイオイメージング)ことは,生物学,医学領域等で様々な新しい知見を生み出し,この領域には不可欠な手法となっています.新規蛍光イメージングプローブとして,フルオレセインとローダミンの構造的ハイブリッドであるRhodol化合物を創出し,ヒト肺線ガン細胞A-549を用いて追跡したところ,本化合物が細胞膜を容易に透過した後,サイトゾルに局在し,異なった励起光照射による二波長の蛍光[フルレセイン(緑),ローダミン(赤)]を観察することができました.現在,より生体深部の情報を検出するためのπ電子拡張型蛍光プローブを開発中です.

          

     当研究室は,独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)の複数分子イメージング研究チーム(榎本秀一チームリーダー),神野伸一郎研究員(本研究室出身),岡山大学,鈴鹿医療科学大学,株式会社日立ハイテクノロジーズ,奈良先端科学技術大学院大学との共同研究で,色素分子の凝集によって蛍光が増大する新しいタイプの有機系蛍光性色素「アミノベンゾピロキサンテン系色素(ABPX)」を開発しました。従来の有機系蛍光色素は,溶液中や固体状態で使用する場合,色素分子同士が凝集して発光効率,発色性,光感受性や光増感性などの機能が著しく低下し,色素本来の特性を制限してしまうことが大きな問題となっていましたが,開発したABPXは,従来の色素とは全く逆に,凝集すると発光が増大するため,これまでの問題点を克服し,医療分野,工業分野などでの有機系蛍光性色素の新たな応用を実現することができると考えらます。例えば医療分野では,ABPXでタンパク質を標識すると,その凝集の様子を蛍光で観察することが可能となり,アルツハイマー病やパーキンソン病など,タンパク質の凝集が引き金となる病気のメカニズムを解明し,新しい治療法の開発につながることが期待できます。このABPXに対する世界の注目度は高く,掲載誌『Chemical Communications』(2010年11月23日号)で2010年11月に最もアクセスの高かった論文トップ10にランクインしました。また2011年11月24日には,米国化学会が全世界の化学論文の中から革新的なアイデアを持つ研究成果を毎週選出する「Noteworthy Chemistry」の7報に選ばれました。(代表的論文 1)

参考論文(山口敬子講師)

  1. 1)藤田芳一:キレート試薬としてのフルオロン型キサンテン系色素の合成と吸光光度分析への応用(総説),Dojin News,158: 1 – 9, 2016
  2. 2)Miyachi K, Moriyama K, Yamaguchi T, Tominaga H, Kamino S, Fujita Y:   Spectrophotometric Determination of Spermine and Related Compounds Using o-Hydroxyhydroquinonephthalein and Manganese(II),  Anal. Sci., 23(9):1103–1107, 2007
  3. 3)西村美智子,中島 桂,山口敬子,藤田芳一 : エオシンと銀(I)を用いるアデニン及び関連化合物の定量, 分析化学,54(9): 761–765, 2005
  4. 4)Fujita Y, Mori I, Yamaguchi T :Spectrophotometric Determination of Biologically Active Thiols with Eosin, Silver(I) and Adenine,Anal. Sci., 18(9): 981 – 985, 2002
  5. 5)Fujita Y, Mori I, Kitano S, Kamada Y: Color Reaction between Pyrogallol Red–Molybdenum(VI) Complex and Protein,Bunseki Kagaku, 32(12):E379–E386, 1983

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