薬学紹介

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薬物治療学II研究室

教授 島本 史夫 (医学博士)

担当科目 薬学入門(1年)、薬物治療学2(2年)、
アドバンスド薬物治療学1(4年)、早期体験学習2(1年)、
病態・薬物治療学演習(4年)、病態・薬物治療学演習(6年)、
薬学総合演習(6年)、特別演習・実習(4年~6年)、
医療薬学総論(大学院)、臨床・医療薬学特論I(大学院)、
臨床連携治療演習(大学院)、病態評価演習(大学院)
所属学会
および
社会活動
日本内科学会(支部評議員、認定医)、
日本消化器病学会(専門医)、
日本消化器内視鏡学会(評議員、専門医)、
日本老年病学会(代議員、専門医)、
日本潰瘍学会(評議員)、日本適応学会(評議員)、
日本医師会(予備代議員、認定産業医)、
日本医学教育学会、日本薬学会(近畿支部委員)、
日本薬学教育学会
e-mail

講師 山口 敬子 (博士(薬学))

担当科目 臨床化学(4年)、アドバンスド薬物治療学1(4年)、
薬局方総論(6年)、早期体験学習1(1年)、
早期体験学習2(1年)、病態・薬物治療学演習(4年)、
薬学総合演習(6年)、特別演習・実習(4年~6年)、
病態評価演習(大学院)
所属学会
および
社会活動
日本薬学会、日本分析化学会
e-mail

配属学生

【大学院生】   0名
【学部学生】   6年次生:14名、5年次生:9名、4年次生:6名

研究テーマ

  1.  細胞生理学・臨床疫学から臨床化学・光診断技術まで、臨床のニーズに基づいて治療に貢献できるように、疾病の病因・病態生理や薬物の影響・作用機序を基礎実験と臨床疫学の双方から明らかにして、新しい診断法・治療法・予防法の開発を目指しています。

研究概要

 平成23年に薬物治療学II研究室(島本史夫教授)として新設され、平成29年に臨床化学研究室(初代:森逸男教授、2代:藤田芳一教授)と統合され、新たな薬物治療学Ⅱ研究室として活動を初めました。
 胃保護に重要な粘液分泌機構を細胞レベルで明らかにし、糖尿病や脂質異常症の病態を消化吸収機能から解明しています。飲酒・喫煙・肥満などの諸因子と消化器疾患・生活習慣病との相関に関する臨床疫学研究を行い、光化学プローブの新規創製や疾患・腫瘍マーカーの新しい光分析測定法を開発しています。基礎と臨床の両面から医療・薬物治療に貢献できる幅広い研究を行っています。
 臨床薬剤師は、医療現場で「薬の専門家」としてのプロフェッショナリズムを持って積極的に意見を述べることが求められ、同時に患者のコンプライアンスや身体的・心理的アウトカムの改善をもたらす良好なコミュニケーション能力も要求されます。研究活動を通じて、薬物の専門家として科学的に思考ができると同時に、医療人として病める人を思いやることができる臨床薬剤師の育成を目的としています。
 興味ある方はぜひ覗いてください。熱意と気力のある学生、好奇心と探求心の旺盛な学生、明るく笑顔のすてきな学生、皆さん大歓迎です。

キーワード

粘液開口放出、細胞内情報伝達機構、小腸脂質吸収機構、MGAT2、DGAT1、アルコール性消化器障害、生活習慣病、
高齢者疾患、病態関連物質測定法、ピロガロールレッド法、尿クレアチニン測定法、尿中ポリアミン測定法、
尿中スペルミン測定法、キサンテン系光化学プローブ

研究内容 島本忠夫教授(薬物治療学II研究室)

(1)胃粘液細胞開口放出と細胞内情報伝達機構に関する研究

 ビデオ強調型顕微鏡システムを用いて、生きたままの胃粘液細胞から粘液顆粒の開口放出(分泌)現象を直接観察することができる。胃粘液開口放出は主にCa2+調節性であり、アセチルコリン(Ach)刺激により活性化された。Ach刺激は細胞内Ca2+濃度を上昇させてPLA2とCOX1を活性化し、アラキドン酸(AA)とPGE2を増加させた。PGE2はEP4レセプターを介してcAMPを蓄積し、開口放出を増強していた。また、アラキドン酸はPPARαを活性化しNOを介してcGMPを蓄積し、開口放出を増強していた。胃粘液開口放出はアラキドン酸を介したPGE2/EP4/cAMP機構とPPARα/NO/cGMP機構の2つのオートクリン機構により調節されていることが解明された。
 アラキドン酸代謝にかかわるCOX阻害剤のインドメタシンは10 µM ACh刺激性開口放出を減少させたが、逆に1 µM ACh刺激性開口放出を増強させた。1 µM ACh刺激ではPGE 2/EP4/cAMP機構が働かないため、アラキドン酸増加を介したNOの増加により開口放出も増加した。一方、10 µM ACh刺激ではPGE2/EP4/cAMP機構とPPARα/NO/cGMP機構の両方が働くため、COX1阻害を介したPGE2の減少により開口放出が減少したと推察された。インドメタシン存在下の異なる粘液開口放出現象はアラキドン酸量に依存していると考えられた。アラキドン酸自身が胃粘膜保護作用を有している可能性が示唆され、胃粘膜障害の予防・治療法の開発も視野においた研究を行っている。
 本研究は大阪薬科大学薬物治療学研究室 田中早織助教との共同研究である。

(2)糖尿病合併高脂血症と小腸脂質吸収機能に関する研究

 糖尿病には高率に高脂血症が合併し、血中脂肪濃度の調節には食餌性脂肪を吸収する小腸の役割も重要である。
 糖尿病モデル(1型:STZ、2型:OLETF)ラットで13C-trioctanoin呼気試験(脂肪吸収機能)を行い、小腸絨毛高(過形成性変化)を測定し、トリグリセリド再合成に重要な小腸上皮細胞内monoacylglycerol acyltransferase-2 (MGAT2) およびdiacylglycerol acyltransferase-1 (DGAT1) タンパク発現の推移を解析した。
 糖尿病ラットでは血中脂肪および再合成タンパク発現量は有意に高値で、小腸絨毛は高くなり、脂肪吸収が亢進していた。小腸吸収面積増加・脂肪吸収増加と再合成亢進などによる小腸経由の脂肪供給過剰が糖尿病に合併する高脂血症の一因と推察された。
 食餌性脂肪摂取量の検討では、高脂肪食群で有意にMGAT2・DGAT1タンパク発現量が増加した。高脂肪食摂取では、脂肪吸収の増加に加えて脂肪再合成亢進が血中脂肪濃度増加の一因となる可能性が示唆された。
 脂質異常症やメタボリック症候群の新たな治療薬開発や食事療法による予防対策への応用も期待できる。
 本研究は大阪薬科大学薬物治療学研究室 田中早織助教との共同研究である。

(3)消化器疾患・高齢者疾患の病態生理に関する臨床疫学的研究

1)

飲酒量・肥満度と逆流性食道炎発症との相関:
逆流性食道炎の罹患率は未飲(全く飲酒しない)群と適量(1日3合未満)群では有意に低く、過量(1日3合以上)群とアルコール依存症群では有意に高値であった。
肥満度では、やせ(BMI18.5未満)群および標準(BMI 18.5~25)群で罹患率が有意に低く、肥満(BMI 25以上)群で有意に高値であった。

2)

飲酒量と胃粘膜病変との相関:
びらん性胃炎および胃潰瘍は逆流性食道炎とほぼ同じパターンを示し、飲酒量に比例して罹患率は上昇した。一方、胃底腺ポリープの罹患率は未飲群に有意に高値であり、飲酒量に比例して罹患率が減少した。日常生活習慣の改善による上部消化管病変予防の啓発を目指している。

3)

飲酒・喫煙・肥満と消化器疾患との相関

4)

高齢者における誤嚥性肺炎発症と処方薬との相関

5)

高齢者における血液検査基準値の再検討

6)

消化管内視鏡検査の心負荷に及ぼす諸因子の解析

7)

その他

研究内容 山口敬子講師(旧臨床化学研究室)

(1)病態関連物質の測定法の開発

1)尿・髄液タンパク質測定法の開発
 糖尿病患者の増加に伴い、腎機能障害による透析患者が毎年1万人ずつ増え続けており、大きな社会問題となっています。このような腎機能障害、特に糖尿病性腎症の早期発見・診断・治療効果の確認などにおいて尿タンパク質、尿微量アルブミンの測定値が重要な指標となります。当研究室では尿タンパク質測定のためのピロガロールレッド法を開発しました。本法は我が国で使用されている尿タンパク質定量法の8割以上を占めており、髄液中タンパク質の測定にも広く用いられています。現在尿微量アルブミンの測定法について検討しています。

参考論文

  1. Bunseki Kagaku, 32:E379–E386, 1983

2)尿クレアチニン測定法の開発
 臨床検査現場での検尿の際には、非侵襲性で常時得られる随時尿を試料とする場合が多いです。しかし、随時尿は希釈されたり濃縮されたりしている場合が多く、測定対象物質の正しい測定評価がされ難い欠点があります。これを回避するためには、尿中のクレアチニンを同時に測定して補正することが必須です。当研究室では、新しい尿クレアチニン測定法を開発し、試験紙法として実用化しています。
 [特許:クレアチニン測定用試験片:藤田芳一、他 特開 2004-138407,2004.5.13]





3)尿中ポリアミン(スペルミン)測定法の開発

 ポリアミンは3個以上のアミノ基を持つ非タンパク性の脂肪族アミンの総称で、生体内では主に胸腺・前立腺・膵臓などの核酸やタンパク質合成の盛んな組織に含まれています。白血病、悪性リンパ腫、消化器がん、肺がんなど多くのがん、特に進行性がんの場合には、尿中排泄量の増加が見られます。臨床上、尿中ポリアミン(特にスペルミン)の測定は、悪性腫瘍診断の補助や化学療法後の効果判定にも大変有用です。また、ポリアミンは老化とも関連があり、高ポリアミン食が動脈硬化抑制作用や抗老化作用としても注目されています。高感度尿中ポリアミン(特にスペルミン)の正確な測定法の開発が熱望されています。


参考論文

  1. Anal. Sci., 23:1103–1107, 2007

4)インスリン測定法の開発

 メタボリックシンドロームが非常に注目されていますが、危険因子としての肥満、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病が本病態と密接に関わっています。これら生活習慣病集積の背景には、インスリン抵抗性や高インスリン血症が関与すると考えられていますので、インスリン測定法の開発は糖尿病の早期発見のみならず、メタボリックシンドロームマーカーとしても極めて有益となります。

 

参考論文

  1. 分析化学, 56:773-779, 2007
(2)新規光化学プローブの創製とその応用

 がん、炎症、循環障害や老化など種々の病態や生理機能に関連するO2-,H2O2,・OH,1O2などの活性酸素種(Reactive Oxygen Species: ROS)はそれぞれ個々の化学種のために、多くの測定法が開発されています。ROSと病態との関連性を考察する場合、個々のROSを測定するよりも、これらの総和を測定する方が実用的で有用です。ROSの新規測定法の開発に際し、光化学プローブとして種々の優れた特性を有するキサンテン系色素の新しい光化学プローブを創製し、その分子構造学的特性について精査しています。


参考論文

  1. J. Fluoresc., 19:769-775, 2009


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