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臨床化学研究室

講師 山口 敬子 (博士(薬学))

担当科目 薬局方総論(6年)、薬物治療学(6年)、
薬学総合演習(6年)、 臨床化学(3年)、
人体の構造と病態1、病態生理学演習実習(5年)、
早期体験学習2(1年),早期体験学習1(1年)
所属学会 日本薬学会、日本分析化学会
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配属学生

【大学院生】   0名
【学部学生】   6年次生:8名、5年次生:8名

 

研究テーマ

光を用いて病気を測る

研究概要

現代医療の目覚しい進展は,臨床化学の著しい進歩に負うところが大ですが,臨床化学は,分析化学と病態化学との2つの大きな柱を基盤にしています.当研究室は,その前身が薬品分析学教室ですので,その特長を十分生かしながら,「光を用いて病気を測る」をメインテーマにして多くの病態関連物質,(1)腎疾患マーカー (2)腫瘍マーカー (3)メタボリックシンドロームマーカー (4)酸化ストレスマーカー などについての新しい測定法の開発,更には新規光化学プローブの創出などについて探索しています.「挨拶を忘れず,元気よく,ケジメをつけて」をモットーに,「信頼性のある測定値」を目標にして,日々賑やかに実験しています.

キーワード

病態関連物質,光分析法,光化学プローブ

プライベートページ

研究内容

(1)病態関連物質の測定法の開発

  • ・腎機能障害による透析患者が毎年1万人ずつ増え続けており,大きな社会問題となっています.このような腎機能障害,特に最近,糖尿病性腎症の早期発見,診断,治療効果の確認などにおいて尿タンパク質,尿微量アルブミンの測定値が重要な指標となります.当研究室では,尿タンパク質測定のためのピロガロールレッド法を開発しましたが,本法は現在我が国の尿タンパク質定量法の8割以上を占めており,また髄液中のタンパク質の測定にも広く用いられています.現在尿微量アルブミンの測定法について検討しています.



  • ・臨床検査現場では,非侵襲性で常時得られる随時尿を試料とする場合が多いのですが,随時尿は希釈されたり,濃縮されたりしている場合が多く,対象物質の正しい測定評価がされ難い欠点がありますので,これを回避するためには尿中のクレアチニンを同時に測定して補正することが必須です当研究室は,新しい尿クレアチニン測定法を開発し,試験紙法として実用化しています.


  • ・ポリアミンは,3個以上のアミノ基を持つ非タンパク性の脂肪族アミンの総称で,生体内では主に,胸腺,前立腺,膵臓などの核酸やタンパク質合成の盛んな組織に含まれており,白血病,悪性リンパ腫,消化器がん,肺がんなど多くのがん,特に進行性の場合には,尿中排泄量の増加などが見られますので,臨床上ポリアミン(特にスペルミン)の測定は,悪性腫瘍診断の補助,術後化学療法後の効果判定等に大変有用です.また,ポリアミンは老化とも関連があり,高ポリアミン食が動脈硬化抑制作用,抗老化作用として注目されており,高感度な測定法の開発が熱望されています.



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    ・近年,メタボリックシンドロームが非常に注目されていますが,危険因子としての肥満,高血圧症,脂質異常症,糖尿病などの生活習慣病が,本病態と密接に関わっています.これら生活習慣病集積の背景には,インスリン抵抗性や高インスリン血症が関与すると考えられていますので,インスリン測定法の開発は,糖尿病の早期発見,さらにはメタボリックシンドロームマーカーとしても極めて有益です.


(2)新規光化学プローブの創製とその応用

  • ・がん,炎症,循環障害や老化など種々の病態や生理機能に関連するO2-,H2O2,・OH,1O2などのROSにおいては,それぞれ個々の化学種のための多くの測定法が開発されていますが,ROSと病態との関連性を考察する場合,個々のROSを測定するよりもこれらの総和を測定する方が実用的で有用です.ROSの新規測定法の開発に際し,光化学プローブとして種々の優れた特性を有するキサンテン系色素の新しい光化学プローブを創製し,その分子構造学的特性について精査しています.


  • ・蛍光プローブを細胞内に取り込ませ,蛍光顕微鏡を画像解析することで,細胞が生きたままの状態で特定の生理活性物質の動的な濃度変化をリアルタイムに測定する(バイオイメージング)ことは,生物学,医学領域等で様々な新しい知見を生み出し,この領域には不可欠な手法となっています.新規蛍光イメージングプローブとして,フルオレセインとローダミンの構造的ハイブリッドであるRhodol化合物を創出し,ヒト肺線ガン細胞A-549を用いて追跡したところ,本化合物が細胞膜を容易に透過した後,サイトゾルに局在し,異なった励起光照射による二波長の蛍光[フルレセイン(緑),ローダミン(赤)]を観察することができました.現在,より生体深部の情報を検出するためのπ電子拡張型蛍光プローブを開発中です.

          

     当研究室は,独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)の複数分子イメージング研究チーム(榎本秀一チームリーダー),神野伸一郎研究員(本研究室出身),岡山大学,鈴鹿医療科学大学,株式会社日立ハイテクノロジーズ,奈良先端科学技術大学院大学との共同研究で,色素分子の凝集によって蛍光が増大する新しいタイプの有機系蛍光性色素「アミノベンゾピロキサンテン系色素(ABPX)」を開発しました。従来の有機系蛍光色素は,溶液中や固体状態で使用する場合,色素分子同士が凝集して発光効率,発色性,光感受性や光増感性などの機能が著しく低下し,色素本来の特性を制限してしまうことが大きな問題となっていましたが,開発したABPXは,従来の色素とは全く逆に,凝集すると発光が増大するため,これまでの問題点を克服し,医療分野,工業分野などでの有機系蛍光性色素の新たな応用を実現することができると考えらます。例えば医療分野では,ABPXでタンパク質を標識すると,その凝集の様子を蛍光で観察することが可能となり,アルツハイマー病やパーキンソン病など,タンパク質の凝集が引き金となる病気のメカニズムを解明し,新しい治療法の開発につながることが期待できます。このABPXに対する世界の注目度は高く,掲載誌『Chemical Communications』(2010年11月23日号)で2010年11月に最もアクセスの高かった論文トップ10にランクインしました。また2011年11月24日には,米国化学会が全世界の化学論文の中から革新的なアイデアを持つ研究成果を毎週選出する「Noteworthy Chemistry」の7報に選ばれました。(代表的論文 1)

参考論文

  1. 1)藤田芳一:キレート試薬としてのフルオロン型キサンテン系色素の合成と吸光光度分析への応用(総説),Dojin News,158: 1 – 9, 2016
  2. 2)Miyachi K, Moriyama K, Yamaguchi T, Tominaga H, Kamino S, Fujita Y:   Spectrophotometric Determination of Spermine and Related Compounds Using o-Hydroxyhydroquinonephthalein and Manganese(II),  Anal. Sci., 23(9):1103–1107, 2007
  3. 3)西村美智子,中島 桂,山口敬子,藤田芳一 : エオシンと銀(I)を用いるアデニン及び関連化合物の定量, 分析化学,54(9): 761–765, 2005
  4. 4)Fujita Y, Mori I, Yamaguchi T :Spectrophotometric Determination of Biologically Active Thiols with Eosin, Silver(I) and Adenine,Anal. Sci., 18(9): 981 – 985, 2002
  5. 5)Fujita Y, Mori I, Kitano S, Kamada Y: Color Reaction between Pyrogallol Red–Molybdenum(VI) Complex and Protein,Bunseki Kagaku, 32(12):E379–E386, 1983

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