薬学紹介

薬学紹介 受験生向け研究室紹介

  • 薬を創る
  • 創薬化学領域

機能分子創製化学研究室

教授 浦田 秀仁 (博士(薬学))

担当科目 有機化学3(2年)、有機化学4(3年)、
有機化学実習(3年)、薬化学特論(大学院)、
創薬化学I,II,III(大学院)、
領域統合型先端科学特論(大学院)
所属学会 日本薬学会、日本化学会、日本薬学教育学会、
生命の起原および進化学会
e-mail

准教授 和田 俊一 (博士(薬学))

担当科目 基礎有機化学(1年)、薬学英語(4年)、
有機化学実習(3年)
薬化学特論(大学院)、創薬化学I,II,III(大学院)
所属学会 日本薬学会、日本ペプチド学会
e-mail

助手 林 淳祐 (修士(薬科学))

担当科目 有機化学実習(3年)
所属学会 日本薬学会、日本核酸医薬学会
e-mail

配属学生

【大学院生】   0名
【学部学生】   6年次生:13名、5年次生:11名

 

研究テーマ

 核酸やペプチドなどの生体関連分子を化学的に修飾し、『核酸医薬』に用いられる化学修飾核酸の創製や、核酸医薬を細胞内に送り込むキャリアの設計など,機能性分子の開発をおこなっています。

研究概要

 私たちの体内では、「DNA」→「mRNA」→「タンパク質」の順に遺伝情報の伝達(セントラルドグマ)がおこなわれています。近年、この遺伝情報伝達の過程でDNAやmRNAを標的として、病態タンパク質の生合成を阻害する『核酸医薬』とよばれる医薬品が注目されています。私たちの研究室では、核酸医薬の臨床応用を目指して、①細胞内還元環境に応答するプロドラッグ型核酸分子の開発、②核酸医薬のペプチド性キャリアの開発を行っています。また、機能性分子システムの創製を目指して、③金属錯体型塩基対の形成を介したDNA伸長反応の金属イオンによるON/OFF制御を行っています。

キーワード

核酸医薬、膜透過性ペプチド、RNA干渉、siRNA,アンチセンス、デリバリー

研究内容

(1)細胞内還元環境に応答するプロドラッグ型核酸分子の開発

 RNA干渉(RNAi)は、細胞内でsiRNA(small interfering RNA)と呼ばれる20塩基対程度の二本鎖RNAによって、特定のmRNAの発現を抑制する生命現象です。現在、病態の原因となるmRNAをターゲットとしたsiRNAを化学合成し、それを『核酸医薬』として用いる研究が世界中で進められています。しかし生体内にはRNA分解酵素が多く存在するため、siRNAは生体内で非常に分解されやすく、このことが『核酸医薬』の臨床応用における大きな問題となっています。 
 この問題を解決するために、RNAの糖部2’-OH基に化学修飾を加えた2’-O-修飾型RNA(図)が用いられていますが、これらの修飾核酸はRNAi活性が大きく低下するため、強いRNAi活性と生体内での安定性の両立は困難であると考えられています。
 そこで、我々の研究室ではsiRNAの生体内での安定性向上とRNAi活性の維持の両立を目指し、プロドラッグ型RNAとして細胞内還元環境で天然型へと変換するREDUCT RNA (Reducing-Environment-Dependent Uncatalyzed Chemical Transforming RNA) を開発しました(図,Chem. Commun., 2013)。現在、この分子を利用したsiRNAの遺伝子抑制効果を、細胞を用いたin vitroでの実験により詳細に検討中で、既に本分子が化学的に修飾していない天然型核酸よりも優れた遺伝子抑制活性を示すことを明らかにしています (Bioorg. Med. Chem. Lett., 2016)。

 

(2)核酸医薬のペプチド性キャリアの開発

 『核酸医薬』の臨床応用の障壁となっているもう1つの問題点は、『核酸医薬』に用いられる核酸分子自体が極性高分子化合物であるため細胞膜を透過できず、その機能を発現できない点があげられます。我々の研究室ではその問題を解決するため、α-aminoisobutyric acid(Aib, U)含有膜透過性ペプチドを設計し、核酸医薬のペプチド性キャリアの開発を行っています。我々の研究室でデザインしたペプチド性キャリアは、疎水性アミノ酸(Aib,Leu,Ala)と塩基性極性アミノ酸(Lys)を組み合わせた両親媒性ヘリックスペプチド [MAP(Aib) と命名] で (Bioorg. Med. Chem., 2013)、さらにがん細胞選択性を上げるために、がん細胞膜上に過剰に発現している αvβ3 インテグリンレセプターに特異的に結合するRGD(Arg-Gly-Asp)配列を MAP(Aib) に結合させています。これらのデザインペプチドが、siRNA を細胞内に輸送するキャリアとしての機能を有すること、さらに細胞内に輸送されたsiRNAがRNAi 効果を発揮することを明らかにしました (Bioorg. Med. Chem., 2016)。




(3)金属錯体型塩基対の形成を介したDNA伸長反応の金属イオンによるON/OFF制御

 DNAはアデニン (A) とチミン (T)、グアニン (G) とシトシン (C) が水素結合を介して塩基対を形成し、二重鎖構造を安定に形成しています。このA-TおよびG-C塩基対の形成がそれぞれ相補的であるため、DNAの複製時にもこの相補性に基づいた娘鎖が生合成され、DNAの遺伝情報が正確に娘鎖に伝えられます。A-T, G-C以外の塩基の対合はミスマッチ塩基対とよばれ熱力学的安定性が有意に低下するため、DNA複製の際にはDNAポリメラーゼによる校正の対象となります。近年、ミスマッチ塩基対が金属イオンにより安定化されることが相次いで見出されました。T-TミスマッチはHgIIイオンが、C-CミスマッチはAgIイオンが配位することにより安定化されることが報告され、当研究室でもT-C ミスマッチがAgIイオンにより安定化されることを見出しました  (Chem. Commun., 2011)。この際、金属イオンの配位による金属錯体型塩基対(左図)が形成されていると考えられています。
 当研究室では、この水素結合に依らない金属錯体型の塩基対合がDNAポリメラーゼによる複製反応の分子基盤となることを世界に先駆けて明らかにしました (Angew. Chem. Int. Ed., 2010)。また、下図のように特定の部位で金属イオン選択的に伸長反応をON/OFF制御することにも成功しています (Angew. Chem. Int. Ed., 2014)。現在、この制御システムを用いた機能性分子デバイスの開発を行っています。

金属錯体型塩基対 DNA伸長反応の金属イオンによる制御

ページトップへ